中園川のアカチバエと鮎帰りの滝

「アユは板崎の堰を越えきらん。堰より上にはヤマメがいる。アカチバエと呼んでいる腹の赤いハヤなら、この川のどこにでもいる」。球磨川の支流、球磨村の中園川沿いで聞いた話である。
国道219号球磨村一勝地から中園川沿いに入り、板崎集落手前で谷に降りた。渓流は照葉樹に覆われ、川岸にはシダやスゲが繁茂している。

板崎の堰

板崎の堰は高さ4mほどで、アユが越えるには困難かもしれない。板崎の5km上流には8m、9m、5mの3段滝があり、地元では「三段轟」、「鮎帰りの滝」と呼んでいる。下流から遡上する魚類が、滝を越えることはまず不可能だろう。板崎の堰ができるまで、アユはここまで上っていた可能性がある。

鮎帰りの滝

「アカチバエと呼んでいる腹の赤いハヤ」の正体とはなにか。可能性のあるのは、ウグイとカワムツである。ウグイは、体長20~30cmで、日本全域に生息している。産卵期になるとオス、メスとも朱色の条線を持つ婚姻色に変わる。アイソ、アカハラ、アカッパラ、アカウオと呼ぶ地方がある。
カワムツは、体長10~15cm、生息域は本州中部以西である。成魚のオスは喉から腹にかけて赤色を帯びており、アカジ、アカンバエ、アカムツなどの地方名を持つ。ヤマメが住むような渓流域にも分布するとされる。果たして中園川のアカチバエはどちらなのか。

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