五家荘西の岩川とオウレンの謎

五家荘(八代市泉町)仁田尾の渓谷で不思議なものを見た。スギの植林地に挟まれて、シロモジやイタヤカエデ、ヒナウチワカエデ、フサザクラ、イヌシデ、カツラなどの広葉樹が茂った斜面であった。猫の爪のような実を同心円状に付け、実の下に緑の葉が展開している。植物図鑑で調べると、キクバオウレンであった。

広葉樹に囲まれた西の岩川の流れ

キクバオウレンは、深山の林内に生える常緑多年草で、乾燥させた根(黄連)を漢方薬として使う。苦味健胃、整腸、止瀉等の作用がある。分布は北海道・本州・四国とされ、本来九州には自生していないとされる。

西の岩川で見たオウレン

西の岩川上流の谷内集落で朝日(わさび)峠のことを聞いた。明治35年大日本帝国陸地測量部発行5万分の1地図『原町』では、西の岩川源頭に「瀧首」の地名が記されている。ところが、昭和31年国土地理院発行5万分の1地図『砥用』では「ワサビ」とされ、さらに平成11年国土地理院発行2万5千分の1地図『葉木』では「朝日峠」となっている。
かつて、西の岩川上流域の人たちは、八代市泉町の中心地柿迫との往来に朝日峠を利用したが、峠から北へ伸びる尾根にも原町(旧砥用町中心地)につながる山道があった。
谷内集落で朝日峠の昔話を聞くうちに、オウレンの話題となった。「50年ほど昔、特産林産品として五家荘でオウレンの栽培が推奨された」という。製薬会社が乾燥根を買い取るということであった。当時、オウレンだけでなく、トチバニンジン(竹節人参)やキハダ(黄檗)も導入された。西の岩川渓谷で見たのは、林産品として栽培されていたオウレンの子孫であった。

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