小さで川に見た最後の尺ヤマメ

明治43年(1910)、旧人吉営林署管内で最初の森林鉄道(森林軌道)である段塔(だんとう)林道が敷設された。その後、球磨・人吉地区では白浜林道(球磨村那良川流域)、大塚林道(人吉市胸川流域)、矢岳林道(人吉市大川間川流域)にも森林鉄道が設けられる。
人吉市上田代町に「土場」(どば)の地名が残されている。上田代地区から小さで川沿いにさかのぼると、かつての段塔町に至る。戦後しばらくまで、段塔町一帯は森林開発で賑わい、小さで川流域で伐採された広葉樹が「土場」に集積されていた。
「トロリーに積んだ丸太を森林軌道で土場まで降ろし、トラックで営林署のあった人吉市南町の貯木場へ運んだ。段塔までの帰りは登りになるので、空のトロリーを木炭機関車が引いていた」。ただ、段塔林道に木炭機関車が導入されるのは戦後のことで、それまでは「下りはトロリーの後ろに馬をつなぎ、帰りは馬が空のトロリーを引いた」という。
段塔から森林軌道が撤去されたのは、昭和30年代になってからである。国有林での森林伐採・植林作業が終結すると、段塔町からは人の姿が消えた。それに伴って、昭和51年(1976)3月には大畑小学校段塔分校が閉校となる。

小さで川の流れ

上田代から段塔林道を上流へと進むと、4キロほどで左下に段塔分校の跡地が見える。分校跡まで下ると、運動場だった広場の脇に「人吉市立大畑小学校段塔分校跡地」の石碑が建っていた。
広場を抜けると、すぐに小さで川の流れである。川岸に出ると、釣り人の足跡が上流に向かって続いている。しばらくすると、釣り人が戻って来た。今日は今年のヤマメ漁期最後の休日である。釣り人は小さで川で今年最後の尺ヤマメを釣り上げていた。

釣り人は尺ヤマメを釣り上げていた

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