奥村川とマムシグサの赤い実

五ヶ瀬町本屋敷から国見トンネルを抜け、十根(とね)川(耳川支流)沿いの国道265号を下ると、奥村へつながる自動車道が左に分かれる。奥村川沿いの自動車道は狭隘で、両岸から岩壁が迫る。自動車道から川底までは10m以上の高度差があり、急峻である。容易に川岸まで下ることはできない。
ゆるやかな斜面を探し当て、灌木につかまりながら川岸まで下りた。渓谷には苔の乗った巨岩が点在し、浅い淵と砂利のたまったトロ場が交互に現れる。水の透明度は高い。周囲の稜線がそれほど奥深くないにもかかわらず、水量が多い。小さな沢がいくつもあり、そこから豊富な山水が流れ込んでくる。

晩秋の奥村川

諸塚(もろつか)村へつながる古い峠道の起点が、奥村集落である。奥村から谷を上り詰め、黒岳(標高1455m)の肩を越えると諸塚村七ッ山(ななつやま)に至る。今でも、奥村川源流のマイゴウ谷左岸を辿り、横尾峠を経て七ッ山につながる峠道が地図上に残されている。
奥村で峠越えの山道のことを聞いてみたが、昔のことを知る人となかなか出会えず、最奥の明林寺まで足を伸ばした。
「谷を上ったところが小畑(おばた)で、以前は人家があった。今はだれも住んでいない。小畑から山道を越えると、七ッ山の奥畑(おくはた)につながっていた」という。
小畑まで林道を登ってみた。地図では、七ッ山に抜ける林道があることになっているが、その日は工事で通行止め。林道脇の木立の中に、真っ赤な実を成らしたマムシグサがポツンと立っていた。

マムシグサの赤い実

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