黒峰川のアブラメと薬師堂

国道218号と別れ、県道を緑川水系大矢川支流の黒峰川に向かう。空気は湿っぽい。正面には黒峰(標高1283m)の姿が見えるのだが、奥に連なる九州脊梁の稜線は薄雲に覆われたままである。
鎌野(山都町、旧清和村)で県道を左折、黒峰林道へ入る。現在では、痕跡らしきものさえ見られないが、戦後しばらくの間、黒峰林道の奥では山仕事の人たちが集落を作り、木材の伐採と搬出を行っていた。
黒峰林道の奥、黒峰川を遡ると黒峰薬師堂がある。堂内には室町時代の作とされる一材造りの薬師如来座像が安置されている。薬師堂周辺はフラットな地形が広がり、石塔の残骸があることから、一帯は室町期の寺跡だと伝えられている。
橋のたもとから黒峰川へ降りる。長さ3mの竿に0.5号の道糸で、ミミズをエサに川魚を狙う。棚田の間を流れるあいだは、黒峰川もコンクリート3面張りの無愛想な流れだが、それでも竿を入れれば、アブラメとハエが次々と揚がる。釣り人に慣れていないせいか、ミミズを貪欲に追ってくる。

黒峰川の流れ

棚田の脇を遡ると、すぐに古い砂防ダムにぶつかる。左岸の竹林を遠巻きし、砂防ダムを乗り越すと、雑木林にはさまれた自然の流れとなる。両岸に覆い被さる照葉樹のおかげで、沢にはあまり陽が差し込まない。足元が暗くて水深がつかみにくい。
同行した小学生たちが、浅い淵に向けて竿を出すと、再びアブラメの入れ喰いとなった。先行していた釣り人が、ニコニコ顔で沢を下ってきた。手に提げた魚籠の中には、20㎝ほどのヤマメの姿があった。

黒峰川のアブラメ

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