深水川と走水の滝の巨大マダラ

球磨川と深水(ふかみ)川の合流点に架かる川口橋のたもとから河原に降りると、浅瀬に2本の丸太を渡した木橋が架けられていた。

深水川に架けられた丸木橋

深水川沿いの県道は、集落の奥で支流走水(はしりみず)川を右に見下ろすように登り始める。さらには走水川の源流を越え、五木村山口に繋がる。その途中に「走水の滝」(別名白滝)がある。ここには、巨大マダラ(ヤマメ)伝説が残る。
伝説のあらましは次のようである。「孫与巳(まごよみ)という人物が走水の滝の上で釣りを楽しんでいた。あまりの気持ちの良さに、ついうたた寝をしていると紅い大きなマダラが、深いツボキ(渕)の泡の中から、花が咲いたように浮き上がり、釣り針をくわえ、勢いよくツボキの中に身をひるがえしてしまった」。孫与巳は、渕の中に吸い込まれてしまい、後にはわらじだけが残された。それ以来、滝上の渕は「孫与巳渕」と呼ばれるようになった。

走水の滝

落差100mを超す魚止めの滝の上流に、なぜ大ヤマメがいたのか。魚止めの滝を越えてヤマメやイワナが生息している事例は、全国各地に見られるという。職業釣り師による人為的な放流のほか、大洪水時に魚類が分水嶺を越え移動したケース、河川争奪(隣接する河川で一方の浸食力が極端に強い場合、奪う側の河川の源頭が上流へ浸食して分水嶺を移動させ、隣接河川の上流域をすべて奪う)による源流域の変化などが考えられている。
「走水の滝」を遠望しながら、五木村山口で聞いた話を思い出した。「小学生のころ父親の運転するオートバイの後ろにしがみついて峠を越え、深水から八代の町までお盆の買い物に行ったことがある」という。山人たちが行き来した峠を、かつて大ヤマメも越えたのだろうか。

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